
店舗・事務所・工場・倉庫で使われるネットワークカメラは、離れた場所から映像を確認でき、複数台をまとめて管理しやすい便利な設備です。一方、カメラ本体や録画機がネットワークにつながるため、画質や価格だけでなく、パスワード、アクセス権限、通信設定、更新・保守まで含めて選ぶ必要があります。
初期設定のまま使う、退職者のアカウントを残す、サポートが終了した機器を使い続けると、映像の意図しない公開や不正操作につながるおそれがあります。法人では、カメラ単体ではなく、録画機、ルーター、PoEハブ、クラウドサービス、閲覧用端末を含むシステム全体で安全性を確認することが大切です。
この記事では、2026年6月にネットワークカメラ向け適合要件が公開されたJC-STAR★3の考え方を踏まえ、法人が導入・更新時に確認したい製品選定、設置、日常運用、保守、廃棄のポイントを整理します。
目次
1. ネットワークカメラでセキュリティ対策が必要な理由

映像設備であると同時にネットワーク機器でもある
ネットワークカメラは、IPカメラとも呼ばれ、LANやインターネットを利用して映像を送る機器です。遠隔確認やクラウド録画がしやすい一方、設定や管理が不十分であれば、一般的なネットワーク機器と同じように不正アクセスの対象になり得ます。
IPAは、ネットワークカメラなどのIoT機器について、初期パスワードの変更、推測されにくいパスワードの設定、使い回しを避けることを呼びかけています。機器を設置しただけで安心せず、最初の設定から運用ルールまで決めておく必要があります。
守る対象は映像だけではない
映像が外部から閲覧されることだけがリスクではありません。不正な設定変更、録画停止、管理者アカウントの悪用、他の社内機器への侵入経路として使われる可能性も考える必要があります。
| 想定するリスク | 起こりやすい原因 | 確認したい対策 |
|---|---|---|
| 映像の意図しない公開 | 初期パスワード、弱い認証、公開設定 | 認証情報の変更、閲覧範囲の制限 |
| 録画・設定の不正変更 | 管理者アカウントの共有、権限過多 | 個別アカウント、役割別権限、操作履歴 |
| 脆弱性の放置 | 更新方法やサポート期間が不明 | 更新提供方針、保守窓口、終了時期の確認 |
| 社内ネットワークへの影響 | 業務端末と同じ構成で無計画に接続 | ネットワーク構成、接続先、通信経路の整理 |
ネットワークカメラの配線と電源をまとめて考える場合は、PoE給電とPoEハブの選び方も確認しておくと、カメラだけでなく周辺機器まで含めた構成を整理しやすくなります。
2. JC-STAR★3を製品選定にどう活用するか

JC-STARはIoT製品のセキュリティを可視化する制度
JC-STARは、IPAが運営するIoT製品のセキュリティ適合性評価・ラベリング制度です。製品が所定のセキュリティ要件へどのように適合しているかを確認し、調達者が製品を比較するための目印として利用できます。
制度には複数のレベルがあり、IPAの説明では★1は製品共通の最低限の脅威を想定し、★2以上は製品類型ごとの特徴や利用形態を考慮します。★3・★4は第三者評価機関の評価報告書に基づいてIPAが認証する方式です。2026年6月12日には、ネットワークカメラ向けの★3適合要件が公開されました。
ラベルだけで安全性を決めない
JC-STARは製品選定の有力な確認材料ですが、ラベルがあればどの設置環境でも完全に安全という意味ではありません。IPAも、適合ラベルは脆弱性が全くないことや、特定の運用環境に必要な機能をすべて保証するものではないと説明しています。
| 確認項目 | 確認する内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 適合ラベル | 取得レベル、登録番号、現在のステータス | IPAの製品情報ページで確認する |
| 想定する利用環境 | 店舗、事務所、工場、倉庫、屋外など | 現場のリスクと評価対象が合っているか |
| 更新・保守 | 更新方法、提供期間、脆弱性情報の窓口 | 導入後も継続して管理できるか |
| システム全体 | 録画機、クラウド、ルーター、閲覧端末 | カメラ以外の構成も安全に管理できるか |
導入時は、ラベルの有無だけで判断せず、製品情報、更新方針、設置環境、運用体制を合わせて比較しましょう。「JC-STAR対応予定」などの表示だけではなく、IPAが公開する登録番号や製品情報を確認することも重要です。
3. 導入前に確認したい製品・サービスの条件

初期設定を安全に変更できるか
導入時には、初回利用時にパスワード変更を求める仕組みがあるか、管理者と閲覧者の権限を分けられるか、不要なアカウントを削除できるかを確認します。複数台を導入する場合でも、すべての機器で同じパスワードを使い回さない運用が必要です。
更新・サポート情報を追えるか
カメラや録画機のファームウェア更新方法、更新通知の受け取り方、サポート終了時期、障害時の問い合わせ先を導入前に確認します。自動更新に対応している場合でも、更新の実施状況や失敗時の対応方法まで確認しておくと安心です。
必要な記録と管理機能があるか
- 管理者・閲覧者など役割別に権限を分けられる
- ログインや設定変更などの操作履歴を確認できる
- 一定時間操作がない場合に自動でログアウトできる
- 必要に応じて多要素認証を利用できる
- 安全な通信方式と証明書の管理方法が示されている
- 脆弱性情報や更新情報を受け取る窓口がある
既設カメラのサポート終了や機器劣化が気になる場合は、修理・交換・保守契約の判断基準と合わせて確認すると、設定変更で継続するか、更新するかを判断しやすくなります。
現在のカメラをそのまま使えるか確認しませんか
ネットワークカメラは、機種名、設置年、録画機、接続方法、遠隔確認の方法によって確認項目が変わります。SATでは、既存設備を活かせる部分と、設定変更・機器更新が必要な部分を現場に合わせて整理します。
4. 設置時に決めるネットワークとアクセス権限

必要のない外部公開を避ける
遠隔監視を行うために、カメラや録画機を無計画にインターネットへ直接公開するのは避けます。メーカーやサービス事業者が示す安全な接続方式を確認し、利用していない遠隔接続機能や通信機能は無効にします。
業務用パソコン、来客用Wi-Fi、防犯カメラを同じネットワークへ接続する場合は、通信の分離や接続制限を検討します。小規模な事務所でも、どの機器がどこへ接続し、誰が管理しているかを図にしておくと、障害や更新時の確認が容易になります。
閲覧権限を役割に合わせる
経営者、店舗責任者、総務担当者、警備担当者、保守会社が同じ管理者IDを共有すると、誰が閲覧・変更したか分かりにくくなります。必要な人に必要な機能だけを付与し、閲覧専用と設定変更可能なアカウントを分けましょう。
| 利用者 | 必要になりやすい権限 | 避けたい状態 |
|---|---|---|
| 店舗・拠点責任者 | 担当拠点のライブ映像と録画確認 | 他拠点や全設定への無制限アクセス |
| 本部・総務 | 複数拠点の確認、利用者管理 | 個人IDを作らず共通IDのみで運用 |
| 保守会社 | 保守時に必要な設定・診断 | 作業後も常時有効な共通アカウント |
| 一時利用者 | 必要な期間・映像だけの閲覧 | 期限を決めず管理者権限を付与 |
5. 運用・保守・廃棄まで続くセキュリティ対策

導入後の担当者と点検時期を決める
ネットワークカメラの安全性は、導入時の設定だけでは維持できません。人事異動、退職、店舗閉鎖、機器交換、保守会社変更のタイミングでアカウントや接続設定を見直します。担当者が変わっても継続できるよう、機器一覧と管理責任者を記録しておくことが大切です。
| タイミング | 確認すること | 対応例 |
|---|---|---|
| 日常・定期確認 | 録画、時刻、通信、異常通知 | 映像再生と通知テストを行う |
| 更新情報の受信時 | 対象機種、影響、適用手順 | バックアップ後に更新し動作確認する |
| 異動・退職時 | アカウントと閲覧端末 | 不要アカウントを停止し権限を見直す |
| 保守会社変更時 | 外部アカウント、接続情報、鍵 | 旧接続を停止し管理情報を更新する |
| 廃棄・譲渡時 | 録画データ、設定、クラウド登録 | データ消去と登録解除を確認する |
映像を個人データとして安全に扱う
撮影した映像が個人データに該当する場合、アクセスできる従業者の限定、責任者や規程の整備、媒体の盗難防止、アクセス制御、ログの取得・確認など、必要かつ適切な安全管理措置が求められます。設置目的、閲覧できる人、保存期間、映像を外部提供する場合の手順を社内で決めておきましょう。
保存期間は長ければよいとは限りません。必要な日数と容量、閲覧権限を一緒に考える方法は、防犯カメラの保存期間を決める考え方で整理しています。
6. 既設ネットワークカメラの見直しチェックリスト

まず現状を一覧にする
既設設備を見直すときは、設定画面を手当たり次第に変更する前に、カメラ、録画機、クラウド、ルーター、PoEハブ、閲覧端末を一覧にします。機種名、設置年、設置場所、管理者、接続方式、保守期限が分かれば、優先順位を決めやすくなります。
| チェック項目 | 確認内容 | 済 |
|---|---|---|
| 初期認証情報 | 初期ID・初期パスワードから変更している | □ |
| パスワード管理 | 機器間で使い回さず、退職者が把握した情報を更新している | □ |
| アカウント | 利用者ごとに作成し、不要なアカウントを停止している | □ |
| 更新状況 | ファームウェアとアプリの更新状況を確認できる | □ |
| サポート | 保守窓口とサポート終了時期を把握している | □ |
| 遠隔接続 | 利用中の接続方式と公開範囲を説明できる | □ |
| 権限 | 管理者・閲覧者・保守担当の権限を分けている | □ |
| 操作履歴 | ログインや設定変更の履歴を確認できる | □ |
| 録画データ | 保存期間、持ち出し、削除、廃棄のルールがある | □ |
| 構成資料 | カメラと周辺機器の接続関係を把握している | □ |
自社で判断しにくい場合は現地確認を依頼する
管理者情報が不明、サポートが終了している、映像が途切れる、遠隔接続の仕組みを説明できない場合は、設定変更だけでなく機器・配線・ネットワークの現地確認を検討します。現地調査で準備する内容は、防犯設備の見積もり前チェックリストを使うと整理しやすくなります。
ネットワークカメラの安全性をまとめて見直したい方へ
SATでは、カメラ本体だけでなく、録画機、PoEハブ、ルーター、遠隔確認、アカウント運用まで現場に合わせて確認します。既存設備を活かす設定変更、部分更新、システム全体の更新を分けてご提案できます。
7. まとめ
製品・設置・運用を分けずに確認する
ネットワークカメラのセキュリティ対策は、強いパスワードを設定するだけでは終わりません。製品のセキュリティ機能、更新・サポート体制、ネットワーク構成、閲覧権限、操作履歴、映像の保存・廃棄を一つの運用として整える必要があります。
JC-STARの適合ラベルは、製品のセキュリティ水準を比較する有力な材料です。ただし、ラベルだけで安全性を判断せず、実際の設置環境と運用体制に合っているかを確認しましょう。既設設備では、管理情報と接続構成を一覧にし、設定変更で継続できる部分と、更新が必要な部分を切り分けることが第一歩です。
よくある質問(Q&A)
Q. ネットワークカメラはインターネットにつながなければ安全ですか?
A. インターネットへ直接接続していなくても、社内ネットワーク、録画機、保守用端末などを通じたリスクがあります。接続範囲、アカウント、更新状況を確認し、内部ネットワークを含めて管理することが大切です。
Q. JC-STAR★3のカメラを選べば他の対策は不要ですか?
A. 不要にはなりません。適合ラベルは製品選定の材料ですが、脆弱性が全くないことや、あらゆる運用環境での安全を保証するものではありません。安全な設置、権限管理、更新、ログ確認が必要です。
Q. 既存カメラのパスワードだけ変更すれば使い続けられますか?
A. パスワード変更は重要ですが、ファームウェア、サポート期限、遠隔接続、アカウント、録画機やルーターの状態も確認します。サポート終了機器は、設定変更だけではリスクを下げにくい場合があります。
Q. クラウド録画と社内録画はどちらが安全ですか?
A. 一律には決められません。クラウド事業者の管理体制、認証方法、保存場所、通信方式、社内録画機の設置環境や保守体制を比較し、自社で継続して管理できる方式を選びます。
Q. 相談前に何を準備すればよいですか?
A. 分かる範囲で、カメラと録画機の機種名、設置年、台数、遠隔確認の有無、保守会社、現在困っている症状を整理してください。資料がなくても、現地で設備を確認しながら整理できます。



